AS エンジェリックセレナーデ
ブランド/工画堂スタジオ
ジャンル/恋愛AVG
2002年3月発売

長い、本当に長い時間を旅してきた。
自分の中の時間が止まってから200年。旅の相棒は背中のフォルテールと、一つの天使の羽。
出会いと別れを繰り返し、ただ自分に永遠という呪いをかけた天使を捜す旅。そして今たどり着いた、地図には載っていない、天使の加護を得るという町・フォンティーユ。
天使にまつわる一つの歌が、今紡がれ始めた――

RPGのようなマップ移動パートとアドベンチャーパート、そしてこの作品の売りである演奏パートがあります。基本的な流れはまず一日がマップ移動になり、テクテクと歩いて人と話したり建物(店や教会、図書館など)に入ったりします。そしてイベントなどが起こるとアドベンチャーパートでテキストを読んでいきます。

また、週に一回コンサートが開かれるので、そこで音ゲーよろしく演奏パートです。
マップはやや見づらいので視点変更とかほしかったかも。まぁ移動はあまり重要ではないので及第点ですね。アドベンチャーパートではオートモードがないです。基本的にイベントは短めのものが多いのですが、終盤はテキストがメインなのであったほうが良かったですね。

演奏モードですが……筆者は音ゲーが苦手なのでノーマルモード(キーボード8個使用)は無理でした。イージーモード(キーボード4個使用)は簡単にクリアできましたが。ただこれ、ミニゲーム的な扱いですね。タイトル画面からフリープレイで遊べるのでやりこみ要素になるかもしれません。自分には無理ですー(笑) ただ、ヒロイン誰かをクリアすると、次のプレイから演奏を自動にできたりするので、自分のように苦手な人も大丈夫です。

セーブ箇所は20個。ただ、セーブできるところが限られている(マップ移動中のみ)ので、選択肢直前セーブがしにくいため、割と使うかもしれません。そのときは20個は少ないかも。まぁイベント自体少ないですし、すんなり個別ルートに入れるので、それほど気にすることは無いかと。

それから、このCD版は修正パッチを当てましょう。
当てないとサーリアルートのEDに辿り着けませんので。

絵師は成瀬ちさとさん。
このゲームの購入動機に絵があったほど、綺麗な絵を描いています。
バランスを取るのが上手い、という印象があります。特に一枚絵。背景とマッチしていて、柔らかい感じが伝わってきました。本当にそんな感じなんですよね。悪い意味じゃなくて背伸びしていないというか。

立ち絵も基本的に問題無しです。ただ、正対からやや斜め方向からの立ち絵に代わると若干違和感があるキャラもいましたが、そこまで言うのは辛口すぎるかと思います。欲を言えばもう少し枚数があればいいかなー、といった感じですね。

背景はちょっと物足りないかもしれません。
原画家さんの雰囲気に合わせたのかもしれませんが、一枚絵はともかく日常のシーンの背景がちょっと平面っぽい印象がありました。

全部で27曲、ボーカル曲が6曲です。
ただし、ボーカル曲のうち4曲はミュージックモードで聞けないので、実質23曲でしょうか。しかしバージョンの違うだけのものが多いので体感する曲数はこれよりやや少ないと思います。

BGMとしてはそれほど耳に残るものはありませんでした。全体的に静寂を連想させるようなものが多いですが、何曲かあれ? と思うものがありました。ボーカルですが、OPの「天使の歌う小夜曲」は掛け値なしに良いと思います。他は……挙げるとすればEDの「羽のブランケットにつつまれて」ですね。ちょっと全体的にパワーが足りない感じです。

音声はヒロイン4人とサブキャラ数人についています。自分でも「あ、名前聞いたことある人だ」、という人もいます(笑) イベントによっては何故か音声の無いものもあって残念でした。配役・演技とも無難なところかと。

書き手は小林且典さん。
まず、これはライターさんうんぬんではないですが、ゲームの進行がアドベンチャー一本ではないので、どうしても重要なイベント数を増やしづらいのですよね。イベントや会話の数が少ないとキャラクターを掴みにくいですし、それだけ描写が薄くなります。なもので、全体的に薄めな印象を受けてしまいます。

また、2周目3周目になってくると、移動してバイトをして、という行動が正直だるかったり。個別ルートに入るまでイベントが結構被ってますし、個別からがまた短めなので……。

うーむ、ここからはちょっとネタバレでしょうか。あと少し毒。

結局最後は「天使の奇跡」と「代償」に終始するんですよね。
それぞれのヒロインの発端が「天使の羽の奇跡」からくるものという設定なのでしょうがないと言えばしょうがないのですが。ただ、発端をそれにすると、どうしても読んでる側としては置いていかれる感じがするのですよ。入り込めないと言うか、対岸の火事というか。オチが読めてしまう、というのもあると思います。

また上にも少し書きましたが、個別からの展開が早すぎるかと。え、そんな設定あったの? みたいな感じで。これなら共通ルートを削って、もっとイベントを使える個別ルートを長くとったり、強制イベントを置くなどしてほしかったですね。

ただ、全てが悪いわけでもなかったり。サーリアルート・ステファの台詞から。
「あなたがこの世界で待つことを選択したなら、きっと彼女は大急ぎで帰ってくるよ」
ベタかもしれません。でも、使い古されるそれというのは、使い古される理由もあるわけで。自分はこういうの、好きですよ。

ネタバレここまで。

それからこのゲーム、前作の「AC エンジェリックコンサート」とリンクしてるみたいですね。
自分はやってないのでわかりませんが。全体的に前作プレイ者に優しい作りのようです。
天使の力は大きすぎて、人間には扱いきれないのか……、というのが総合的な感想です(ぇ

ラスティのお母さん
名前が出てこなかったのですが、彼女に萌え萌えですよ。サブキャラなので立ち絵が凄く少ないとか気にせず、イチオシです。出番は少なかったですが、娘を想う、そして夫を想う気持ち……自分のハートに確かに届きました。

2005.4.6