こみっくパーティー DCE
ブランド/AQUAPLUS
ジャンル/同人恋愛ADV
2003年11月発売

同人誌即売会・こみっくパーティー。
なんとなく目指していた美大に落ちたものの、四月から始まろうとしていた大学生活を前にして、幼稚園からの腐れ縁、九品仏大志に連れられて目の当たりにした新しい世界。
このデカい世界の頂上に、誰もたどり着いたことの無い世界が広がっているのではないか――
一度は諦めかけた絵の技術を引っさげ、同人界に身を投じることになった。果たしてどこまでいけるのか。そして、どんな風景が見えるのか。

今、新たな一歩を踏み出した――

大まかに、同人誌作成パートとアドベンチャーパートからなります。
同人誌作成はタイピングです(非タイピングに変更可能)。週ごとにスケジュールを決め、週末には外出やキャラごとのイベントが起こったりします。

タイピングモードでは、作成する同人誌のジャンルによって偏った語彙になり、思わずにやりとしてしまうようなチョイスだと思います。普通にタイピングの練習になるようなクオリティだと思いました。ただ、知らないネタはすごく難しかったりしますが……。

攻略的な観点から見ると、アイテムがかなり使えるので難易度はそれほど高いとは思いません。パラメータ関連ですが、画力などはタイピングの効率(高いほど少ない入力で完成する枚数が向上)に影響しますが、テレビを見ることで変化する作品の影響はあまり……というかほとんど関係ないような気が。

アドベンチャーパートは少し不自由かなー、と思いました。
オートモードやアドベンチャーパートでのセーブ・ロードがありません。まぁこれはアドベンチャーパートが少ないことが理由だと思いますが、オートモードはあっても良かったんじゃないかなー、と思います。また、立ち絵が一人しか立たず、表示の切り替えが遅いのでテンポが悪くなっていたりします。

セーブ箇所は100個。
期間が一年と長めで攻略キャラ数も多いのでこれくらいで充分かな、とも思います。取りこぼしのイベントなんかを調べるとかすればなおさら。まぁ、全体的な難易度はそれほど高くないので足りないと言うことは無いでしょう。

絵師はみつみ美里さん、甘露樹さん、中村毅さん。
今更とやかく言うまでもない有名どころだと思います。ですが、わりと初期の頃なのか……結構崩れているところもあります。特にすばるさん関連の絵が少しダメポだったです。縮尺比がおかしかったり、一枚絵と立ち絵のギャップが激しすぎたり……。

すばるさんはDC版の追加キャラですし、違和感はしょうがないにしてもこのギャップは……。そのほかに目のついた点はありませんでした。シナリオが弱めのキャラは絵がかなりフォローして、作品としての価値を高めていたと思います。

特に千紗さん。シナリオの部分でも書きますが、キャラとして少し抵抗があったものの、絵の魅力がそれを補って余りある出来だと思います。特にクリスマスの一枚絵と立ち絵制服ver。制服萌えじゃなくても破壊力抜群でした。各キャラ、エンディングでの一枚は素晴らしい出来だったと思います。

CGの塗り、背景に関しても及第点でしょう。はい。
全体として、絵に関して不満はほぼ無い感じですね。

……あー。OPムービーは……ちょっと( ̄▽ ̄;)
なんていうか、無理にアニメーションにする必要はなかったような。同時期に製作されていたアニメとのタイアップ効果を狙ったものかもしれませんが、ゲームとしてのOPを作ってほしかったかな、と思います。

全部で26曲、ヴォーカル曲が3曲です。
BGMの出来は非常に良かったです。各キャラのテーマBGMが存在しますが、これだけ多い数出して類似が無くぴったりハマっているのはすごいです。特に、瑞希さんの「風はいつも春一番」、詠美さんの「プリセンスタイム」、南さんの「森のお茶会」なんかは耳に残っていますね。あとは「Gradual Happiness」もいい感じです。

これに対してヴォーカル曲はすこしパワー不足かな、といった印象でした。
OP、あさひさんの挿入歌、EDという配分なわけですがイマイチ記憶に残っていませんし……。このあたりは少し残念でした。

声優さんは全体的にグッジョブでした。
ただまぁ、声優さんというより台詞が苦しいというか……ヒロインさんの口癖みたいなのが鬱陶しいところもありましたけどね( ̄▽ ̄;) 「ぱぎゅう」とか(ぉ

書き手は三宅章介さん、菅宗光さん。
ボリュームがありました。なんと言っても攻略ヒロインが10人ですから……。
良くネタが続いたなぁ、とか思ったり。共通ルートもほぼありませんし。

ゲームの性質上、同人誌作成が主になりイベント発生が難しかったりして、ヒロインごとのイベント数は少なめだと思いますけど個性とか違いをはっきり出していました。シナリオ作りのお手本のような構成でした。”お手本のような”の弊害として、展開のもって行き方が少し単調に感じられたりもしますが、それでもクオリティは高いです。

また、このゲームがシナリオ以外のファクターと上手に組み合わさっている要因として、「同人」というテーマの選択にあると思います。作り手側にとって、これほど共通項に困らないネタはないでしょう。そしてプレイヤー側も良く知っているので臨場感が増す。その上のディティールの深さ、とくれば完璧なんじゃないでしょうか。つまりは、このテーマ選択の時点で6割くらいは勝利が確定していた、と(笑)

その素材を殺すことなく上手く仕上げている書き手さんの力量も高いものがあるといえるでしょう。他人に推薦できるゲームの一つだと思いますよ。

さて、ここから各キャラのシナリオ感想へ。掲載順番=攻略順番です。


・瑞希シナリオ
好きだからこそ、相手を敬いたい、足を引っ張りたくないという立場の違いを主題にしたシナリオ。瑞希のキャラをよく生かし、無理の無い自然な展開です。恋愛モノのステレオタイプと言えるのではないでしょうか。

話の流れに矛盾点はないと思われ、好きになった相手の価値観を理解しようと頑張る瑞希の行動や、好きだからこそ大成してほしい、自分が枷になりたくないというのはけなげさがあります。本当に隙が無い、完成度の高い話です。

・郁美シナリオ
なんと言っても絡みが少なすぎる。やりたいことというか、主題はわかるのだがCG枚数からいってもサイドストーリー感は否めませんでした。エンドの持っていきかたは上手だと思います。

若干ネタバレ。
恋愛エンドではなく、今までの支えや彼女の気持ちを汲みつつも違和感ない(=不自然に恋愛関係にならない)終わり、そしてチープな結果を出してのご都合主義でもないところは高評価です。

正直、他のヒロインに比べてイベントが少ないので、アフターが気になるところではあります。上の記述と矛盾しますが、ハッピーエンドも見てみたかったり。ラストの会話は考えさせられるものがありました。恋愛感情と同情は違う、ということでしょうかね。
ここまで。

・あさひシナリオ
声優が上手。あさひというキャラクターを良く消化していると思います。「お姫様と一村人の恋」という感じ。瑞希シナリオと対比をなす存在でしょう。あさひの葛藤は派手さは無いですが。うまくまとまった良作といえると思います。価値観は画一的なものではなく、多人数から敬われるもの、例えば巨万の富だとか名声だとか、そういうもの=善 ではなく、いかにその人が満足できるか、ということですね。これらを天秤にかけて客観的に批評することはナンセンスでしょう。

勝手にアフターを考えてみました。漫画家になった和樹の作品がアニメ化に。んで、あさひが声優復帰。アイドルではなく、声優のみの活動なら両立可能なんじゃないかなー、なんて思ったり。ちょっと行動が極端すぎたよね、とか思ったり。妄想乙。

・玲子シナリオ
なんと言ってもキャラが凄くたっていました。屈託無く誰とでも接する魅力が大きいですね。かといってボケボケしているわけでもなく、結構隙の無い人でした。恋愛の過程もすっぱりしていて彼女らしいと思います。

若干ネタバレ。
最初は友達、レナのコスプレ以降、惹かれていって、クリスマスを経て、コスプレ禁止の危機、解決――と、これもお手本のような話。しかし、それをしっかりと破綻無くまとめているところは素晴らしいです。玲子さんが友達をものすごく大事にしているところも、彼女の魅力的な点でしょう。こみパ終了後も彼氏とではなく友達と帰っていますし。 ここまで。

・彩シナリオ
一言で言えば凄く綺麗なシナリオ。山となる冬コミまでは、激しさは無いが優しい感じのやりとりがよいです。冬コミ前後の山場では彩の一途さがでてさらに萌えます。全体的に派手さはないですが、キャラのよさも手伝い”綺麗な”シナリオだと思う。

原稿を書く機会が多いので、イベント数が多いのもポイント高いですね。逆に電話のパターンは少な目ですが。一枚絵の使い方、綺麗さも◎。台詞は少なめですが、声優さんの演技も上手いです。同じ”はい”とか”あ……”でも感情が伝わってきますし。キャラクターをよく理解しているからでしょうね。冬コミ後、バイトをやめているのにショッピングモールで出会ったとき、まだバイトしていることになっていたのがミスといえばミスかな。

・詠美シナリオ
彩シナリオとは対称で、全体的に激しさをもったシナリオ。キャラクターの性格もあいまって、話に勢いがあり、グイグイ引っ張られます。また、サブキャラが良い味を出していました。しかし、同人誌を買いに来たのがあさひさん、というところは立ち絵の関係もあったかもしれないけれど、あさひシナリオを終わったあとだと違和感が……。

若干ネタバレ。
最初は(特にユニットを組むあたりは)少し抵抗があったけれど、徐々によさを出してくるのはさすが。そしてイベント絵の使い方が上手いです。どれも詠美のよいところを強調していて◎。あと、和樹に敗れた後、立ち絵で包帯をちゃんとしているのがポイント高いですよ。こういうディティールにこだわったものは好感を持てます。漫画にかける情熱を根底に持った、いい話だと思いました。定番だけど、その定番をしっかり押さえて上手くまとめた話でしょう。
ここまで。

・由宇シナリオ
序盤はキャラ強すぎて引くことが多かったです。自己中心的というか、そういう由宇さんが。こういうキャラなんだとは思うけど自分はちょっと苦しかったです。不器用な娘の恋、って位置づけだと思うけどキャラに萌えなかった分、シナリオも平坦。詠美シナリオのときの由宇さんのほうがよかったような……。

・南シナリオ
南さんがおっとりだけに、緩やかに、しかし雪が積もるがごとくシナリオに引き込まれました。基本的にマッタリ、そして甘いお話。とにかくキャラ萌えを前面に出した感じですね。

あと、わりと主人公への想いが後から出てくるので、他のシナリオとは異をなしているかもしれません。自分としてはキャラの傾向がツボだったのでよかったです。ただ、話に起伏がないといえばそうかもしれません。でも、頑張る主人公の姿勢とか、他のシナリオとは違った感じで面白かったです。

ラストはちょっとはしょりすぎた感があります。もう少しエピローグに時間をとっても良かったと思いますね。EDの絵はかなりお気に入りだったり。

・千紗シナリオ
抵抗はかなりありました。こういう、一生懸命やっているから結果が悪くともいいよね、みたいなキャラ……というか人間が余り好きではなかったからなんですが……。頑張った結果の失敗なら許される、とか甘い考えはキライなので。あと語尾が……_| ̄|○

と、結構印象は悪かったのですが、シナリオとしてはそんなに悪くなかったです。年下担当、って感じの甘えられる話ではありましたが、特に目に付く点もなくスムースに。ラストではしっかり成長していましたし。グラフィックは破壊力抜群でした。上でも述べてますが制服立ち絵、クリスマスCGは( ̄▽ ̄)b おそらく、クリスマスイベントは一番良かったと思います。あと、シナリオ中にあった、姉と妹どっちがほしかったですか? という質問に、妹と答えるときは身を裂く思いでした_| ̄|○

・すばるシナリオ
うーん、この話は……。まず、キャラが強すぎるといいますか。「ぱぎゅう」と「〜ですの」の口癖が好きになれないと苦しいです。話もまぁそれなりな感じで。ラストでもう少し会話文を減らして、テンポが上がればいいかなと思いました。同じことをダラダラ繰り返していただけですし……。

以上です。10人は多いっす……_| ̄|○

牧村南さん
一人はキツイですね(笑) 個人的に瑞希さん、彩さん、玲子さん、南さんあたりは僅差っぽい感じですが、やっぱり年上ってことで(マテ) ちなみにメガネ無しverの方です。

2005.12.15