Fate/Staynight
ブランド/TYPE-MOON
ジャンル/伝奇活劇ビジュアルノベル
2004年1月発売
手にしたものの願いを叶えるという聖杯。
これを得るため、聖杯によって選ばれた7人の魔術師(マスター)が聖杯に与えられた使い魔(サーヴァント)とともに戦いを繰り広げる。通称・聖杯戦争。魔術師見習いだった主人公は、偶然にもマスターに選ばれ最強のサーヴァント・セイバーと契約する。
戦う意味は? 聖杯とは? 本当に守りたいものとは?
今、物語の幕が上がる――
吉里吉里2とかをベースにいろいろ改良を加えられています。
今回のこのゲーム、人気の要因のひとつに効果的な演出があげられてしかりだと思います。画面揺れだとか、暗転だとか。ゲーム時のシステムメニューもよかったと思います。メニュー開くたびにそっちにカーソルが移動するのとか。不足なし。
セーブ箇所は300個。
多いようですが、タイガー道場補完とか企むと結構埋まります。
絵師は同人時代から変わりなく武内崇さん。
月姫のときは同人だし、で終わってた絵も見事に商業レベルにまで昇華されています。
この人の絵は、自分の印象として線が少ないですね。服もシンプルなもの多いですし。あと、うまいなと思ったのは一枚絵になってもそれほど立ち絵と違和感が無いところですね。立ち絵は枚数が多く、ディスプレイを縦横無尽に走り回ってくれました。
それから、武内さんじゃないのですが、タイガー道場をうめていくと現れるミニ劇場。そこで出てくる脱力感溢れる絵も結構好きです。
39曲、ボーカル付き2曲。
ただオープニングのボーカル付きThis illusionはコンフィグのサウンドモードでは聞けません。BGMはどれも秀逸。それが戦闘シーンであれ、日常シーンであれ、気持ちを大いに高ぶらせてくれました。使いどころのせいもあるでしょうが、例えば「悪夢」だとか「約束された勝利の剣」なんかはシーンが鮮明に映し出されると思います。
ちなみに自分のお気に入りは「日差しの中で」。戦闘シーンが多い中で、日常の大切さみたいなものを演出してくれる、と思うわけです。
またこのゲーム、音声が付いていません。
自分はいらなくても全然問題ない人ですが。これ、フルボイスにするとCD3枚に収まらないでしょ……。
書き手は今や小説家としてもデビューしている奈須きのこさん。
あいかわらず文章長いです(ぉ) ただ、これだけの世界観を投影するんであればこれくらいでも仕方ないかな、とは思います。TRPGが土台になっているかのような設定はコンフィグ画面のステータス設定にも現れていましたし。
なぜ、これほどFateが売れているのか、ちょっと考えてみます。
確かに「月姫」で同人ゲームにもかかわらずいろいろなグッズまで販売されるほどの人気を得て、発売前の下馬評が高かったこと、奈須さん自身の緻密な世界観というのもあると思いますが、自分はもうひとつの視点を考えているわけです。
つまり、初モノの力、というもの。”コロンブスの卵”よろしく、それまでなかったものにはセンセーショナルさがあります。例えば”泣きゲー”のジャンルを確立した「Kanon」や”鬱ゲー”の代名詞「君が望む永遠」など。そしてこのFate、今まで冒険モノというものはあっても、ここまで練りこまれた、ちょっとネガティブな言い方をすれば、エロゲーでここまでするか、というくらいの凝りようなんですね。でも破綻してるわけではないから、目先を変えられたユーザーはハマる。
世界観構築の際、少し前述しましたが、TRPGの影響が多くあるようです。ネット上で奈須さんと武内さんのチャットログとか見てたらそういってますし。このあたりも従来のライターさんがモノを書くことで磨いてきた経歴と、異を成すものでしょう。
前作など、つまり「月姫」や「空の境界」なんかと比較すると、かなり一般向けに書かれているんじゃないでしょうか。そんな気はします。まぁ「空の境界」は特殊としても。
さて、シナリオの中身について。
このゲーム、攻略制限のあるゲームです。セイバー→凛→桜と進行していきます。この順番制限、特に抵抗は無いですね。逆に指定してくれる方が、ライターさんの意図は伝わりやすいとも思います。
セイバールートはかなり綺麗な物語になってます。
主人公とセイバーの信頼、すれ違い、そして絆。完璧な人はいない。それを支えあえる存在の尊さ。そんなシナリオです。
凛ルート。
これは、主人公の成長を軸に描かれています。信じるもの、譲れないもの。そんな、挑戦の物語。
んで、桜ルート。
他の二つとは毛色が違います。ここで明らかになる聖杯戦争の全貌。背後に動いていた意志と執念。そして桜の、聖杯戦争への関わり方。このシナリオでは命をかけてでも守りたい、例え何を犠牲にしても救いたい、尊いものを描き出します。
また、脇役の働きが光ります。
例えばイリヤ。全ての章で出てきて、いい仕事してます。人の数だけその人の哲学と信念があるわけで。それに基づいて、キャラの個性が光ります。
かなりボリュームはありますが、決してはずれでは無いと思います。たくさん文字読むのが苦手で無いならオススメ。今年の作品ベスト5に入るのではないでしょうか。ただ、誰かをこっちの世界に引き込むとして、最初の一本にするものではないでしょうね。おそらく2or3本目。最初からこれやると他の作品が短く感じたり。まぁ好みによるでしょうが。
ライダーさん
セイバーさんと迷ったのですが、ライダーさんに。これで年上属性は決定的といえます(笑)
この人はいろいろ語るとネタバレにならざるをえません。
桜ルートで彼女の本領が発揮されます。
それは戦闘においてもそうですが、彼女の忠誠心の篤さ。常に桜を想い行動し、主を助ける。
そんな彼女の姿勢に胸打たれたわけです。
アンケート葉書にも書いたのですが、彼女の魔眼でどうやら自分は魅了されてしまったようで(笑)
眼帯取ったらなお素敵〜。んで、桜ルートなのに桜に全然惹かれなかったのは秘密。
2005.7.26 誤字修正
2004.9.5