家族計画
ブランド/D.O.
ジャンル/ADV
2002年12月発売(フルセット版・アップデート版)
(2001年11月発売 オリジナル版)

一人で生きてきた。
親に捨てられ、親戚の家でのぞんざいな扱い。頼れるものは自分だけだった。そんなとき、バイト先で倒れていた女の子、春花を拾う。行き倒れ。外国人。避けるべきところを助けた自分の行動。そこから、物語は動き出す。

元企業戦士の寛。流浪の少女末莉。自殺未遂だった真純。元クラスメイトの準。公園で絵描きをしていた青葉の家で、寛の提案の元、一つの計画が動き出す。

相互扶助計画・「家族計画」――

アドベンチャーゲームとして、特に変わったところの無いシンプルな画面です。
ショートカットボタンは無く、右クリックでメニュー表示、そこから各種設定ができます。オートモード、スキップ、バックログと問題なくプレイ可能です。

セーブ箇所は27個。
これはちょっと少なめでしょうか。テキスト量が多く、選択肢もわりとあるのでそのたびにセーブすると足りないと思います。とはいうものの、選択肢はそれほど難しいものは無いと思うので大丈夫でしょうかね。セーブには日付とシナリオのパート名が出ますので、大体の状況はつかめると思います。

絵師は福永ユミさん。
一人なのですが、サブキャラクターも含めてかなりの人数を生み出されています。そしてどのキャラも高いクオリティでまとめられており、シナリオとあいまっていい味を出していました。

特にその表情の豊かさには驚かされます。
そういう意味で、非情に人間味のある絵だったと思います。一枚絵・立ち絵ともに十分な枚数があり、その二つの間で違和感もありませんでした。シナリオの影響もあるかもしれませんが、各キャラの固有CGより複数のキャラが一堂に会するCGの方が印象に残りました。

お気に入りは茶の間で春花がポーズをとっていて全員が集まっているCGです。

背景も問題ないです。
テキストの印象にマッチした、柔らかい感じの風景。各シーンのバランスを壊さない、いい仕事をしていたと思います。

全部で26曲、ボーカル付き2曲です。
ボーカル曲はどちらも良い出来でした。ゆったりとした曲調で日常性というかそんな普段着的なイメージを感じました。その中でも存在感のある歌声で、月並みですが「家族」のような感じでしょうか。

BGMも全体的に柔らかく優しい感じに統一されています。作品を支える一つのピースとして、十分すぎる働きだったでしょう。全く問題ないです。

音声ですが、通常版は残念ながら音声無しです。
通常版に音声を付けるアップデート版と最初から音声のついているバージョンが後に発売されていて、そちらは当然ながら音声ありです。ちなみに自分はアップデート版をプレイしました。声優さんのチョイスも違和感無く、演技も素晴らしかったです。

青葉ねーさんや劉さん、寛なんかは個性が強いのですが、すごくハマってました。

書き手は山田一さん。
家族をテーマに五つの物語を書かれたわけですが、どれも秀逸でした。
本当にここまでのクオリティを持ったゲームが存在するのか、といった感じです。量は全体的に多め。共通パートでは家族計画の移り変わりを、面白さとシリアスを織り交ぜて描き出していました。各キャラの境遇、過去、抱える問題。そして各シナリオに入っていきます。個別になっても中だるみすることなく、最後までしっかりとした文章でした。

何がここまで自分をひきつけたのでしょうか。
その一つに現実味と言うものがあると思います。理想論はいくらでも語れますし、一つの”お話”なのでそれを表現することも出来るでしょう。しかし、各キャラが本音をぶつけ、主張をする。受け入れざるを得ない現実。不可思議な力が働くのではなく、例え失敗でも、そこで諦めず支えあって前を向き歩いていく。こういうところに強い共感を覚えたのだと思います。

本来あるもの、あって当然なものが無いということ。
人間は弱いですから、そういう”普通”じゃないものを排除しようとします。
共通の敵にしようとします。そんな現実。それでも生きたい。そして幸せになりたい――
すごく人間的だと思います。

どのキャラの話も好きですが、特にオススメなのは末莉ルート、準ルートでしょうか。
末莉さんの方では彼女を中心に家族計画参加者達の心の表情、表に出すのは恥ずかしさがあるが不快ではない、末莉さんのもつ魅力である周りの人々に与える純真さがクローズアップされた心温まる話でした。青葉ねーさんがいい味出しているのですよ。

そして準さん。
こちらはホントに号泣しましたよ。共通ルートでもちょっと触れられますが、彼女の境遇と目的、そしてそれを支えていく司たち。涙無しには語れないです。

無条件な愛。その尊さ。人間性。生きていくということ。そんな風景を見せてくれました。

高屋敷青葉ねーさん
どのキャラも個性があり魅力的なのですが、イチオシはこの方に。
毒舌家でクールな感じなのですが、なかなかどうして強い芯と熱い心をもってお持ちであります。青葉ねーさんルートもさることながら、上でも触れたとおり他のキャラのルートでも存在感を発揮しました。

2005.6.12