痕
ブランド/Leaf
ジャンル/ビジュアルノベル
2002年7月発売(リニューアル前 1996年7月)
親父の死から一ヶ月。
別居中だったこともあり、どこか他人事であったが四十九日でもあったので、父親の実家に訪れる。そこには四人の従姉妹がいた。幼い頃の記憶とは違った、成長した姿。彼女らは幼い頃の両親に続き、育ての親まで失ってしまった。痕を持ちながらも主人公と明るく生活していく。
だが、事件という名の波は、容赦なく襲い掛かる――
Leafビジュアルノベルシリーズのシステムです。
全画面に立ち絵、背景など絵が並び、その上に文字が表示されるというもの。音声がない分、文字を読ますということにおいては良いシステムだと思います。また、演出も効果的でした。鮮やかな演出、というのではなく、単純なもの(横振動とか特殊なフェイドアウトとか)が多かったですが、使い方が上手かったです。フォントも雰囲気に合っていてグッド。
ただ、オートモードが無いのか痛いかな、と思います。文字を読み進めることを第一に置いたのかもしれませんが、せめて選択権をユーザーに与えてもいいかな、と。
セーブ箇所は20個。
少ないですが、シナリオがそんなに長くないのでなんとかいけるでしょうか。ただ、全体として考えると足りないかもしれません。
絵師は水無月徹さん。
独特さが出てますが、とっつきにくい絵、というものではないと思います。
自分は結構好きなほうです。
立ち絵の表情変化が上手に表現されていました。ゲーム全体として、立ち絵のパターンは十分だと思います。逆に一枚絵は枚数的に少なかったかと。シナリオのボリュームを考えると、印象に残る絵が少なかったのかな?
背景は可もなく不可もなくといったところですか。高い水準でまとまってると思います。
全部で26曲。
ボーカル曲はありません。ボーカル曲が無くても評価8です。BGMのお手本のような印象です。特に静かな曲調が秀逸。音楽家の人々が、しっかりと作品という絵を意識して作っているのではないでしょうか。
シリアスな展開が多いなかで、クリックする手に緊張をもたらします。しかし、ポップな場面では少し荒さがあったような気がします。曲のタイトルもいまいちですし……。
全体通してみて、個別に思い出せるようなインパクトの強いものはないです。まぁ、今レビューを書いてる時点で聞きなおすと、やはりよい雰囲気を作り出すなぁ、と耳を傾けますが。
また、CV(キャラクターボイス)はありません。
元が古いゲームですし、スクリプトの仕方みても読ませる前提で作られてるので、これでいいと思います。……それに、この作品に合う声優さんを揃えるのって、かなり大変だと思いますし……。
書き手は高橋龍也さん。
今回彼の作品に初めて触れたわけですが、かなりの力量があると思われます。
文章表現の巧みさとか、意図のある文章構成といったものが感じられました。特に、何気ない人物描写。自分も少しは文字を書いたりしますので、あぁ、やっぱプロだ、自分には無理、なんて思う場面がよくありました。特に初音シナリオでは、全体的に会話シーンが少ないこともあってか、そういう印象が。
また、このゲームは攻略制限があります。
千鶴→梓→楓→柳川と来て、最後に初音となります。そのあとおまけシナリオもあります。ここまで制限あるゲームもめずらしいと思います。しかし、この「痕」というゲーム、この全員をクリアして初めて一つに繋がるお話だと思うのですよ。今で言うところの「月姫」や「Fate/Staynight」のように。そういう意味では、今やひとつのジャンルになりつつある「伝奇」の先駆け的存在なんではないかと。
各ヒロイン終盤は事件の全貌が見え出し、ドキドキの連続です。
ただ、難点をいえば、全体としてのボリュームが少ないです。
いわゆる”共通パート”が短く、核心へ迫る部分までさっさと行ってしまいます。まぁ、思考の飛躍があるわけではないので取り残されることは無いのですが、早いな、とは感じるでしょう。
それから恋愛描写が少なめ。
これはコンセプト上、ヒロイン側がすでにある程度耕一を知っており、少なくからず仲がよい状態から始まるということもあるのでしょうが。あと、選択肢が難しく、BADENDに足を頻繁に突っ込むと思うのですが、これがまた結構インパクト強いです。本当に「ぁ……_| ̄|○」って感じになるので。CG回収のためもあり、全部BAD見ましたが。
また、シリアスな本編と違い、おまけシナリオは本当に同一人物が書いたのだろうか、と疑いたくなるほどの作風の違いが。抱腹絶倒させていただきました。キャラクターの個性や設定をうまく使った、よくあるような、でも書けといわれれば悩むお話です。このためだけの立ち絵を用意したりしてて……やりますね、Leafさん(笑)
柏木千鶴さん
おそらく、コレを見る前に登場ヒロイン並べられて、どれがTNTの最萌えでしょう? って問題出したら10中8,9当たるのではないかと(ぇ) やはり姉ですよ。才女で、決して人には弱みを見せない、強い人。でも、内面を垣間見ることで……萌えっ! 普段のぽけぽけっぷりもよいです。
2004.10.23