智代アフター 〜It's a Wonderful Life〜
ブランド/Key
ジャンル/恋愛AVG
2005年11月発売

町外れの廃品回収屋に就職し、智代と生活していた朋也。
そこに父親の隠し子を連れてきた智代の弟・鷹文。
さらに鷹文の元恋人・河南子も家出して居候することに。

五人で過ごす奇妙な夏休みが始まる――

基本的にCLANNADの時のシステムと同じですが、細部が追加されてより使いやすい仕様に。
あと、音関係が追加されていましたね。オートモードの速度が自分にぴったりなんですよね、デフォルトの設定で。まぁ調整できますし、あんまり関係ないですが(笑) シンプルなウィンドウなんかも好きです。基本的に問題ないのですが、一つだけ言うなればタイトルからオープニングムービーを見られる機能をつけてほしかったです。秀逸な出来のムービーなんで、何回でもみたいですし。

セーブ箇所は30個。
CLANNADの時と違ってそれほど分岐とかなく、わりと簡単にBADEND直行するので数としてはこれくらいかなー、とか思ったり。

絵師はフミオさん。
CLANNADの樋上いたるさんとは違いますが、この方の智代さんもいい感じでした。というか、全く問題なく。崩れるような部分もありませんでしたし、表情豊かで、コミカルな絵もあって良かったです。枚数は若干少なめかな、とも思いますがゲームのボリュームからすると妥当だと思います。というか、前作のCLANNADが多すぎだといいますか(笑

お気に入りのCGは、今回のディスクにも描かれている5人の絵。あと、エンディングに出てくるともさんの絵ですね。あと、ともさんかわいい(´ヮ`*)

背景もグッジョブでした。
場面が多かったので結構数があったと思いますが、どれも綺麗に仕上がっていました。朋也邸でみんなが団欒している絵なんか、平和な感じが印象に残っています。

全部で16曲、うちボーカル曲が2曲となっています。
少なめですが、BGMは数ではないな、と思わせるだけのパワーを持った16曲だったと言えるでしょう。一つ一つの曲を聴くと、様々なシーンが思い出せます。本当にクオリティが高いですよ。Keyは化け物か、と(笑

曲としては、物語の時期もあり、夏を根幹にした作りになっていると思います。曲を聴くことで夏の様々な表情を思い浮かべることが出来ましたし。それは夏の朝日であったり、夕焼けであったり、日の暮れた夜であったり。

ボーカル曲の「Light colors」「Life is like a Melody」はともに素晴らしい仕上がりです。前者はオープニングで聴いて鳥肌が立つような印象でしたし、後者はエンディングで流すにはこれしかない、という感じでした。んで、「Light colors」の歌詞。プレイした後、是非とももう一度読んで(というか聴いて?)ほしいです。AIRの「鳥の詩」の時もそうでしたが、印象が代わると思いますよ。

音声。
今回はフルボイス仕様です。自分にとって、初めてKeyの音声がついた作品になったわけですが、声優さんもいい仕事していました。作品をしっかり噛み砕いているといいますか。流れを良く理解したところが多く、プロフェッショナルを感じました。あと、エンディングに流れるクレジットを見ていてビックリしたことがあったんですが……まぁ、これはプレイ後のお楽しみということで。まさかあの人が、みたいな。

書き手は麻枝准さん、樫田レオさん。
いや、毎回のことながら驚かされます。一体どこにこれだけの引き出しがあるのだろう、と。麻枝さんの作品は五作目になりますが、このクオリティの高さ。おそらく努力もされているのでしょうが、ずっと高いレベルで保ち続けることができていることが素晴らしいと思います。

CLANNADのアフター的な存在なので、CLANNADはプレイしていた方がベターでしょう。一応やっていなくても話は繋がると思いますが、やっぱりやっておきませんとね。

さて内容。
恋愛と言うよりヒューマンドラマ、って感じでした。人とは何か、生きていくとは何か。各人が悩み、考え、試行錯誤して成長していく過程を描いています。

人の数だけ人生があり、哲学がある。その一端を提示しているものだと思います。実際、自分にも哲学があります。信念があります。プレイ中はそれらが物語を否定するときがありました。これは認めざるを得ません。しかし、彼らの信念と行動、そしてその結果。それはなんと力強いことか。自分の哲学と信念は変わらないでしょう。それは自分がこれまで生きてきた道標であり、人生であるわけですから簡単に変わるようなものではなく、逆に簡単に変わるようではいけないと思うわけです。それでも、この話に出会えて本当によかった。そう思える作品でした。

”泣きゲー”という言葉があります。それをプレイすることで泣けるほど感動する、ってことでしょう。では、泣かせることを狙っているのでしょうか? Keyのゲームは感動することが多いです。敬遠する方は、目的がそこになかったり、単に泣きのツボとでも言えるものを押しているだけだ、と批判したりすると思います。雑誌のインタビューなんかで、そういう効果を狙っている描写もある、という記事もみた記憶があります。では、この作品が泣きゲーかと言われれば、そうは思わないというのが自分の感想です。


確かに、人生を進んでいく上で苦難には遭遇します。
解決できれば嬉しく、うまくいかなければ哀しく、涙することもあるでしょう。
しかし、それを目的にしているのでは決してないと思います。それを思わせるだけのメッセージ性が、このゲームにはあります。副題となっている”It's a Wonderful Life”。この意味を知ること、それこそがこのゲームのメッセージでしょう。このメッセージは強烈です。口だけで理想論を展開することは簡単ですが、それには重みがかけています。しかし、最後に示される瞬間まで、この物語を読んできたなら心を揺さぶられずにはいられないでしょう。それだけのモノがある。絶対に。


若干ネタバレなこと。
後半の記憶喪失の部分。これは蛇足な印象がありました。”記憶喪失”というワードは何かタブーな気がします。確かに、ともの学校を作るときに伏線として頭部に傷をおってはいるのですが……。ここがネックになるのではないでしょうかね。
ここまで。

テキスト的なこと。
コミカルな部分、そしてシリアスな部分。ともに素晴らしい出来でした。河南子さんの登場シーンでは結構引きましたが、それも醒めさせるほどのものではありませんでしたし。コミカルな部分では各キャラの持ち味が充分発揮されており、何度も笑わされました。シリアスな部分では言うに及ばず。地の文よりも台詞で展開していくの臨場感があり、テンポがよかったです。

あと、最初のHシーンはいらないです。

坂上智代さん
萌えキャラ、というとなんか違う気もしますが。今回は彼女も含めた成長の物語でしたからね。CLANNADの時とはまた違った、魅力がありました。
……いかんせん、彼女に関するシナリオが物足りない感は否めません。

修正 2006.2.10
2005.12.25